クロス職人の坂口です。(^^♪
今日は壁紙の張り方のお話をさせていただきます。
壁紙の張り方には、実はいくつかの工法があります。
建物の時代や用途によって、その張り方はきちんと使い分けられてきました。
基本的に、現在の住宅では壁紙は直張り工法がほとんどです。
石膏ボードなどの下地材が工場で精度よく作られるようになり、下張りをしなくても十分きれいに仕上がるようになったからです。工期も短く、費用も抑えやすいため、新築・リフォームを問わず、この直張りが一般的になっています。
ただし、直張りは「簡単な工法」というわけではありません。
下地の状態がそのまま表に出るため、パテ処理や下地調整をどれだけ丁寧に行うかで、仕上がりには大きな差が出ます。正直なところ、ここは職人の腕が一番出る部分だと思っています。
一方で、下張り工法という張り方もあります。
壁紙の下に、さらに下張り紙を張る方法で、現在の一般住宅ではほとんど使われなくなりました。理由はシンプルで、手間も時間もかかり、どうしてもコストが上がるからです。住宅事情が変わった今では、あえて採用されるケースはかなり限られています。
ただ、下張りが完全になくなったわけではありません。
下張りは主に、襖やお寺などで使われる屏風や衝立に用いられる「袋張り」という形で、今も現役の工法です。下地を包み込むように張るこの技法は、張り替えを前提とした建具や、意匠性を重視する和の建築には欠かせません。住宅の壁とは、そもそも求められる役割が違うんですね。
昔の建物では、下地材の精度が今ほど高くなかったため、下張りをして調整する必要がありました。
しかし現在は、下地材そのものの品質が上がり、直張りでも十分な仕上がりが出せるようになっています。その結果、住宅では直張りが主流になりました。
実際に、工法の違いで仕上がりや耐久性が大きく変わる例もあります。
たとえば、真鍮入りの金箔壁紙。こういった壁紙は、直張りで施工すると、年月とともに金色が変色し、「おうどいろ」と呼ばれるような色味に変わってしまうことがあります。これは、下地や接着剤の影響を直接受けてしまうためです。
しかし、和紙を用いて袋張りを行うことで、その変色を大きく抑えることができます。
下地と仕上げ材の間に和紙を挟むことで、余分な湿気や成分の影響を受けにくくなり、金色の美しさが長持ちします。使用する和紙の種類によっては、金色が100年持つとも言われています。
そして今は、使う壁紙接着剤の種類も非常に重要です。
昔に比べて接着剤の性能は大きく進化していますが、どんな壁紙にも同じ接着剤を使えばいい、というわけではありません。壁紙の素材や下地との相性を考えずに選んでしまうと、変色や浮き、劣化の原因になることもあります。
特に、金箔壁紙や和紙壁紙、繊細な素材を使う場合は、接着力だけでなく、成分や経年変化まで考えた選定が必要になります。ここもまた、見た目では分からない部分ですが、仕上がりの寿命を左右する大切な要素です。
どの工法が良い、悪いという話ではありません。
建物の用途や、求める仕上がり、耐久性によって選ぶ方法が違うだけです。一般住宅なら直張り、襖や寺院、屏風、衝立などには袋張り。それぞれに役割があります。
クロス工事は、ただ壁紙を張るだけの仕事ではありません。
見えない下地、工法、接着剤。その積み重ねで、数年後、十数年後の仕上がりに差が出てきます。
クロスエスでは、現在の住宅事情を踏まえた直張り工法を基本としながら、下地の状態や素材の特性を見極め、その現場に合った張り方と材料選びをご提案しています。
「なんとなく張る」のではなく、
「理由があって、その工法と材料を選ぶ」。
そんな当たり前のことを、これからも大切にしていきたいと思っています。
