「仕事」と「作業」の違い。昔の僕は、お客さんの家をただの“現場”だと思っていた

クロス職人の坂口です。

今日は、クロス職人として仕事をする中で、最近改めて考えさせられたことを書いてみようと思います。

それは、

「仕事」と「作業」は、同じようで全然違う

ということです。

壁紙を貼る。

言われた場所を施工する。

決められた工程をこなす。もちろん、これも職人の大切な仕事です。

でも、もし「言われたことをやる」だけになってしまったら、

それはいつの間にか「仕事」ではなく「作業」になってしまうんじゃないか。

そんなことを、あるお客さんからの相談をきっかけに強く感じました。

「仕上がり」以上に、お客さんが困っていたこと

1年ほど前に、以前クロスエスで施工させてもらったリピーターのお客さんからご相談をいただきました。

知り合いの工務店さんに大工工事をお願いした際、ついでに他のクロスも施工してもらったそうです。

ところが、仕上がりに納得できず、

「坂口さんに相談するのは筋違いだと分かっているんですが、一度見てもらえませんか?」

というご連絡でした。

現場を確認すること自体は、珍しいことではありません。

ただ、そのときにお客さんがおっしゃった言葉が、とても印象に残りました。

「仕上がりの悪さもショックなんですけど、やり直しの工事で、また家に人が入って生活のリズムが崩れるのが一番きついんです」

 

この言葉を聞いて、ハッとしました。

職人からすると、

「仕上がりが悪かったなら、もう一度やり直せばいい」

と考えてしまうかもしれません。

でも、お客さんにとっては、そんな簡単な話ではありません。

家の中に知らない人が入る。

作業の音がする。

普段と違う生活になる。

そして、予定していた時間を工事のために空けなければならない。

つまり、やり直し工事で失うのは、単純に「もう一度クロスを貼る手間」だけではありません。

お客さんの時間や生活のリズムまで奪ってしまうことがある。

ここまで考えて仕事をしているかどうか。

そこに「作業」と「仕事」の大きな違いがあるように思います。

昔の僕も、完全に「作業員」でした

こんな話を偉そうに書いていますが、昔の僕自身がまさにそうでした。

下請けの仕事を中心にしていた頃、僕にとってお客さんの家は、正直「人が暮らしている大切な家」という感覚が薄かったんです。

自分にとっては、

「今日はこの現場でクロスを貼る」

ただ、それだけ。

暑ければ勝手に玄関を開けっ放しにする。

昼休憩になれば、道具を散らかしたまま現場を離れる。

水が必要になれば、何も言わずにお客さんの家の水道を使う。

今振り返ると、本当に恥ずかしいことをしていたと思います。

当時の僕は、

「クロスを綺麗に貼るのが自分の仕事。それ以外は関係ない」

くらいに考えていました。

いわゆる「職人脳」だったんだと思います。

でも、お客さんからすれば違います。

そこは、毎日家族が生活している場所です。

そんな大切な空間に、僕たち職人がお邪魔して仕事をさせてもらっている。

それなのに、自分の作業のことしか考えていなかった・・・

今考えれば、いつトラブルが起きてもおかしくなかったなと思います。

技術があるだけでは、本当の意味で「プロ」ではない

もちろん、職人にとって技術は非常に大切です。

クロスなら綺麗に貼る。

下地をきちんと処理する。

材料の特徴を理解する。

納まりを考える。

仕上がりの品質を高める。

これはプロとして当然のことです。

でも、それだけでは足りないと思うようになりました。

僕が今大切にしているのは、

「お客さんの生活の中に入らせてもらっている」

という感覚です。

例えば、

作業前に音が出ることを伝える。

お客さんが通る場所をできるだけ塞がない。

休憩するときには道具を整理する。

家の中を移動するときには、できるだけ生活の邪魔をしない。

こうしたことは、クロスの仕上がりそのものには関係しないかもしれません。

でも、お客さんにとっては大切なことです。

「この人なら家の中に入ってもらっても安心できる」

そう思ってもらえることも、職人の仕事の一部だと思っています。

「腕はいい。でも、お客さんの前には出せない」

工務店さんやリフォーム会社さんとお話ししていると、

「腕はいいんだけど、お客さんの前には出しにくい職人さんもいる」

という話を聞くことがあります。

これは、職人として考えさせられる話です。

技術がある。

仕事が早い。

仕上がりが綺麗。

それはもちろん大切です。

でも、お客さんの家に入る以上、

「この人に家の中を任せても大丈夫」

と思ってもらえることも同じくらい大切なのではないでしょうか。

リフォームは、新築の工事とは少し違います。

すでにお客さんの生活があります。

家具もあります。

家族の時間もあります。

そこへ僕たち職人が入っていく。

だからこそ、技術だけではなく、音や動線、声かけ、整理整頓など、細かな部分まで気を配る必要があります。

「作業」ではなく「仕事」をする

壁紙を貼る。

それだけなら「作業」です。

でも、

「この家には、どんな人が暮らしているんだろう」

「この工事によって、お客さんの生活にどんな影響があるだろう」

「どうすれば、できるだけ普段通りに過ごしてもらえるだろう」

そこまで考えて動く。

それが、僕の考える「仕事」です。

これはクロス職人だけの話ではないと思います。

大工さんでも、電気屋さんでも、水道屋さんでも、どんな仕事でも同じではないでしょうか。

自分が手を動かしているその先には、必ず誰かの生活があります。

そこを忘れてしまうと、仕事は簡単に「作業」になってしまう。

だから僕自身も、忙しいときほど気をつけたいと思っています。

ここまで偉そうに書いてきましたが、クロスエスも決して完璧ではありません。

忙しくなれば、目の前の仕事をこなすことに意識が向いてしまうこともあります。

だからこそ、現場に入るたびに自分自身へ問いかけています。

「今日、ただ作業をしに来ていないかな?」

壁紙を綺麗に貼る。

もちろん、それは大前提です。

そのうえで、お客さんの大切な住まいと生活にお邪魔しているという責任を持つ。

技術と気配り。

その両方を大切にしていくことが、僕が考える「職人の仕事」なのかなと思っています。

これからもクロスエスは、ただ壁紙を貼るだけのお店ではなく、

「ここに頼んでよかった」

と思っていただける仕事を積み重ねていきたいと思います。

壁紙の張り替えをお考えの方は、価格や仕上がりだけでなく、

「この業者なら、自分たちの暮らしを大切にしてくれそうか」

という視点でも、業者を選んでみてください。

それも、リフォームを後悔しないための大切なポイントだと思います。

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